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部活動紹介も終わり、体育館から教室に戻ると相変わらず周りの生徒は会話を弾ませていた。私は窓際の一番前の自分の席に着くと、周りの雑談を聞きながら窓の外を見る。
「自己紹介でもしようぜ。」
教室の真ん中を陣取り、先ほどから明らかに目立っているグループの男子生徒が声を上げる。
「えっと、まず言い出しっぺの俺からするな。山田圭です。この辺に住んでるから中学同じ奴も多いと思うけど、改めてよろしく。」
そう言うと、山田君は爽やかな笑顔を見せた。これから山田君がリーダー的存在になるのだろう。
「次、、、。」
山田君と目が合った。ここからは名前順という事だろうか。
私は立ち上がり少し後ろを向いて口を開いた。
「相田奈緒。」
周りの動きが止まるのがわかる。でも、こういうのは簡潔な方がいい。どうせ一週間もすれば嫌でもお互い知り合う事になるのだ。
再び山田くんに目を向けると、面食らったような顔をしている。目が合うと、ようやくクラスの雰囲気を立て直そうと司会を進めた。
「お、おう。よろしくな。次、、、。」
そういや、後ろの席は誰が座っていただろうか。後ろから椅子を引く音がする。目を向けると、特に容姿が目立つわけでも埋もれるわけでもない、普通と呼ぶにふさわしいような少女が立っていた。
彼女の明るい声が教室に響く。
この平凡な少女が再び教室に沈黙をもたらすと予想できた者など、誰もいなかった。
「飯田志穂です。探偵部に入部しようと思っています。よろしくお願いします。」
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