9人が本棚に入れています
本棚に追加
第一部 ー青嵐高校ー
『冷静さとは常に持ち合わせるべき、
人間の人間たる所以である』
と、私は思う。
日本を代表する進学校でありながら、生徒の自主性を重んじる歴史ある学校ーーー青嵐高校。
先週満開を迎えた桜は桜吹雪となり、私たちの入学を祝っている。
新しい制服に身を包んだ他の新入生たちの笑顔は咲き乱れていた。
今日から私はこの学校に通う事になる。
他の生徒に混ざることなく、かと言って自分の世界に閉じこもり、人を避けるわけでもない私は、この場にいる新入生の誰よりも冷静かもしれない。
「いい学校生活を送ってくださいね。」
その言葉に伏せていた顔を上げると、私の胸にブローチを付けてくれた先輩が微笑んでいた。
ー美人だー
思わず口に出してしまいそうになった言葉を飲み込む。
「では。」
私は上品にそう言って去って行った先輩の背中を、無意識に目で追っていた。
ー冷静さとは人間たる所以であるー
そう、頭の中で反復する。私は視線を前に向け、先輩の去って行った方向とは逆の方向に一歩踏み出した。
先輩の腕に付いていたタスキを思い出して呟く。
「生徒会。」
冷静になった頭に響いた。
最初のコメントを投稿しよう!