第一章 赤い瞳

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 GFの本拠地があるアステニー国。  GFの事務所と呼ばれるその建物の敷地は、とても大きかった。それはまるで、一つの町と言っていいほどの膨大(ぼうだい)な広さだ。  俺が、GFの本拠地に初めて行ったのは、今からちょうど、一年前のこと。  建物の中には、さまざまな部屋があり、その中の一つに、俺が働いている事務所がある。  一年前、事務所の扉を初めて開いた時、中にいた人物たちが、一斉に俺に注目したことを、今でも鮮明に覚えている。その時、俺と、もう一人、成瀬南と言う人物も一緒だった。  俺たちが入った大きな建物の一室には、3人の男たちが椅子に腰掛けていた。俺と南は、緊張のあまり、中に入るやいなや無言で立ち尽くした。  一人の人物が、椅子から立ち上がったのを見た俺たちは、さらに身を強ばらせる。  立ち上がった人物は、俺たちに歩み寄ると「はじめまして。神崎託叶と、成瀬南だよな?」と、やわらかい笑みを浮かべて口を開いた。  彼は、さらに言葉を続けて「俺は野々村 竜。これからよろしくな」と言って、俺たちに、手を差し出す。  GFの事務所に、初めて足を踏み入れた俺たち。そして、それは、世界模試でしか聞いたことがなかった、野々村竜さんたちと、初めて対面した瞬間でもあった。
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