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とある山奥にて、辺鄙ともいえるその場所で、微かな声が響く。
「ん、もうちょっと…………」
少し興奮の混じったそれはひとりの少年から発せられるもので、こみ上げるものを堪えるかのように上擦っていた。ずっと待ち望んでいたことがついに訪れることへの期待に胸が高鳴る。ドクドクという動悸が相手にも聞こえてしまうのではないかなんて、馬鹿みたいなことを心配してしまう。
でも、聞こえてもいいか。こんなにも嬉しいのだから、ひとかけらでも幸福感が伝わったらいい。
「いや…すこしずれて……そう…そこっ……!
いい、いい、よ……」
そして訪れた待望の瞬間、声を抑えることが出来なかった。
「あっ!ぁ、……や、
やったぁああああああああああああああああああああああああああ!
オオムラサキとカブトムシとスズメバチの三つ巴ショットとれたあああ!」
奇跡の瞬間を捉えた喜びの叫びがクヌギ林にこだまし、なんとも平和的な色をした青空へと溶けていった。
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