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 全車がグリッドにつくと、後方でグリーンフラッグが降られた。 続いて、スタートラインに立つレッドフラッグマンがコースからポストへ戻る。  クラッチを握ったままエギアが一速に入っているのを確認し、エンジン回転を上げた。アクセルを煽るとタイミングを外しやすいため、回転数は一定だ。  スタートシグナルに神経を集中する。 レッドシグナルが点灯、すぐに意表を突くような早いタイミングで消えた。 クラッチをリリース、リヤタイヤに荷重を掛けつつフロントが浮かないようバランスを取る。カウルに潜り込み、真っすぐに1コーナーを目指した。  二速、三速とシフトアップ。シグナルの消えるのが早かったせいか、タイミングを合わせられなかった選手が多いようだ。ポールポジションの優貴を抑え、トップで1コーナーに突入した。すぐに減速しながら2コーナー、S字、逆バンク、ダンロップと切り返す。後ろをちらっと振り返ると、優貴がぴたりと付けている。右回りのデグナー一個目、シフトダウンしながら二個目とカットイン。優貴の様子から、スタート直後に無理な仕掛けはしないと踏んで、コース幅を目一杯使ってスムーズにターンした。  スプーンカーブを立ち上がって裏ストレートにトップのまま進入。エンジン音で、優貴がスリップストリームに入るのが分かる。高速コーナーの130R手前でインを突いてきた優貴を先に行かせた。シケインを切り返し最終コーナーを立ち上がると、メインストレートで今度は俺が優貴のスリップに入る。1コーナー手前でインをうかがうと、優貴があっさりと引いた。お互い考えていることは一緒のようだ。十三周で争われるレース、最初の四、五周はタイヤを労わりながら三位以下を引き離し、文字通りの一騎打ちに持ち込むつもりだ。  お互いのスリップストリームを使いながら、二分十八秒台を刻んで周回を重ねた。  五周目に突入。メインストレートでピットサインを確認する。8.5、3 +4、LAP9。 ラップタイム二分十八秒五、三位とは四秒差、残り周回は九周という意味だ。トップの優貴は目の前を走っているので、ポジションやタイム差を表示する必要は無い。  1コーナー手前でスリップから出ようとした瞬間、優貴が動く。圧力を前面に押しだしたブロックが、戦闘開始を告げていた。
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