神様大学死神科

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 いつものことだけど、廊下から研究室に入ると、温度が二十度ほど下がった感じがする。もっとも、ただそう感じるだけで、実際には気温は下がっていない。この部屋に充満する「気」がそうさせるんだろう。 「失礼します」  声を上げると、僕に背を向けて椅子に座っているマヒル教授が、くるりと椅子を回転させた。 「来たか。オオミ」  僕の顔を見て、マヒル教授は上目遣いにニタッと微笑んだ。多分本人は朗らかに笑ったつもりなんだろう。僕も一人前の死神になれば、マヒル教授のように不気味な笑いができるんだろうか。 「まあ、座れ」  マヒル教授は骨のような手で椅子を示した。 「君の成績は――と」  マヒル教授は手に持った紙を見ながら言う。僕の成績評価表だろうか。 「魂解析学はC評価、死の国原論もC、比較死神論もCか。えーと、死者社会学はBになってるな。うーん、あまりいいとは言えんな。卒業試験は君には荷が重いかもしれんな。でも、ここをクリアすれば、卒業後は死神局に入ることができるからな。頑張るんだな」 「はあ」僕は溜息を吐くような弱弱しい声で答えた。  神様総合大学を卒業すれば、僕は神様本部で働くことになる。神様本部の本部長は最上級神が務めている。神様本部にはそれぞれの神様の部署があって、死神科の卒業生が入るのは死神局だ。そこで、上級神の局長の指示により、ヒラ死神たちは死の宣告を言い渡しに行くことになっている。 「これより卒業試験を行うが、君も分かってるだろうが、試験の方法は命を終えようとする者に死の宣告をすることだ」  と言って、「ヒッヒッヒ」と不気味に笑った。本人は朗らかに笑ったつもりなんだろうけど。 「ええ、分かってます」 「えーと、君への課題は――」  と言って、ヨミ教授は背後の机から紙を取り上げた。僕に手渡す。試験用紙だった。 「これ、君が死の宣告をする相手――ターゲットだ」  手渡された試験用紙を一瞥して、僕は憂鬱な気分になった。 「健闘を祈る。ヒッヒッヒ」  僕の気持ちを知ってか知らずか、マヒル教授は不気味な笑い声を上げた。まあ、本人は朗らかに笑ったつもりなんだろう。部屋の温度がさらに下がったようだ。
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