第1章 一年目の嘘

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第1章 一年目の嘘

高校入学してから早々、虐めの対象になった僕。 佐藤希望は、今日もクラスから仲間外れの一日を送っていた。昔から虐められていたので慣れてる上、何の問題も無い。今回は、クラスで一番可愛い女子の友瀬楓花に告白という罰ゲームを受けることになった。 「僕と付き合ってください!」 「いいよ」 一瞬、唖然と彼女を見る。何と言っていいのか迷うと、彼女が予想外の行動に出る。 「嘘だよ。でも、私の嘘を見抜いたら付き合ってもいいよ」 「え?」 その日から嘘をつく楓花と冗談が通じない僕の嘘の物語が始まった。今まで女子とまともに話してなかった僕が楓花と話している。学校生活においても嘘をつかれる日々。楽しくなかった事が楽しくなり、嬉しくなかった事が嬉しくなるような充実とした一日が半年も続いたある日。下校の時は、いつも待ってくれるのに今日は何故か居なかった。いつもと違う雰囲気になると僕は、不安を抱いたその時、 「やめてーーーーー!!」 「見てるだけで腹立つんだよ。調子乗るな!!」 叫び声と共に怒鳴り声が聞こえる。その声は、僕の教室から聞こえてきたので慌ててドアを引く。そこでは、男女五人が楓花を虐め楽しんでる光景だった。僕がここまで怒りを込み上げたのは、初めて。虐められるのは僕で十分、なのに楓花を虐めたから見逃さないわけにはいかない。 「何だ、お前。あー陰キャラの活躍か」 「……」 「何だよ、その拳は? 俺を殴りたいのか、殴りたいなら…」 「うるせぇんだよ!! 僕は、どうなってもいい。だけどお前らは、楓花を傷つけた!!」 僕は、一人の男子に思い切り力を溜めて顔面に向かって殴った。当然、鼻血が出たから所々に飛び散ってるのが分かる。机や椅子にぶつかったことで騒ぎに気付いた先生が足音を立てながら此方に向かう。 「何事だ!!」 「先生が来たわ、一旦引こう!!」 「あ…ああ……」 「希望……君?」 楓花は、保健の先生に連れられ保健室へ。担任の先生からは、職員室に呼ばれ一時間による説教を受けた僕。説教に関わらず僕は、あることを決めた。楓花を絶対に悲しませない、と。この件で、変な噂も流れるようになった。陰キャラの裁きと言われても気にしない。数日後、あの件で話したい事があると担任の先生から伝言があった。再び、職員室に入るとあの時の男女五人が居たのだ。今すぐ愚痴でねじ伏せたいが今は我慢。突然、頭を下げた。どうやら、親に気付かれ謝罪しろと僕より倍の説教をしたらしい。 「あいつらがお前に謝ってるんだ。俺からも先生としてお前がやってないにも関わらず責めてしまい、悪かった」 「先生も皆、頭を上げてください。クラスの仲間を殴ったのは、僕なので僕が謝らないと…」 「いや、お前の判断が正しかった。俺達で出来る限りのお詫びするから他の奴等には、黙っててほしい」 その後、色々としてくれたのでありがたいが楓花のことが心配。あんな光景を見せたら、もう友達だと思ってくれないはずだ。無茶振りで先生に住所を教えてくれないかとお願いした結果、聞き出すことに成功。楓花の家に行くのは、初めてだから緊張に揺さぶられながらもインターホンに手をかけた。 「あの、同じクラスの佐藤希望です。楓花のお見舞いに来ました」 「……希望君? ちょっと待って」 お母さんが出てくると思ったら楓花が出てくれるとは、想定外。ゆっくり玄関のドアを開くと可愛い私服姿で出向いた楓花。僕も楓花も頬が少し赤くなり視線をそらす。とりあえず中に入れさせてもらった。部屋に入ると、机と椅子にテーブル、ベッドだけ置いてあったので意外にも驚く。 「楓花は、こっちに引っ越したばかり?」 「違うけど、事情があって」 「事情って?」 「それは、また今度~」 楽しそうに話す楓花を見てほっとする。楓花に手伝えること無いか確かめながら手伝った。気付けばあっという間に六時過ぎではないか。翌日から登校出来ると言ってたし、余りにも長く付き添うと楓花も迷惑だから帰る支度を始めようと思った、その時 「後、二年半か…」 「どうした?」 「ううん、何でもない!!」 ボソッと楓花から呟きが聞こえたが何と言ってたのか分からない。聞き返したが話をそらされてしまう。次期に分かることだろうと前向きの気持ちで玄関のドアを引いた。 「また、心配事や不安があったら声かけて」 「今日は、本当にありがとう」 照れくさそうに早足で出る僕。少し見えたが、楓花の笑顔が可愛かった。あっという間に一年が終わろうとしていた冬が遂にやって来る。クラスでは、冬休みの過ごし方を考える人が多い。顔を伏せつつ、昨日の出来事を振り返る。本当にあれで良かったのかと後悔してる時、楓花が教室に入ってきたのだ。一瞬、間をおいて静かになるが再びざわつく。ふと気付けば、楓花が近くで僕を呼んだ。顔は真っ赤で、勢いでバランスを崩し倒れた。 「大丈夫、希望君?」 「あ…あぁ……」 「あ、本音だと心配してくれると思った?」 「そんな訳ないだろ!?」 また、嘘を付く楓花に戻ってくれて良かった。本当に。そして、クリスマス当日の放課後。楓花に呼ばれたので教室で残ることに。夕焼けに一人だけというアニメのようなシチュエーションを思い浮かべ待つこと五分。包装した箱を持って教室に入る楓花。まさか、と思い心に期待が溢れる。 「希望君、私に彼氏が居たらどう思う?」 「え?」 「嘘だよ。はい、クリスマスプレゼント!!」 正直、嬉しかった。陰キャラな僕が女子から貰ったのは、ゴミと消しゴムのカスだけ。まともに貰えない僕がクリスマスプレゼントを貰っていいのかと思うが口に出さない。その後、楓花と楽しい一夜を過ごしたのであった。
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