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大学4年になった茜、
もう数か月後は卒業だった。
高速道路の清掃の仕事は順調に続いていた。
吹っ切れればどんな仕事でも出来る、そう思うと楽になった。
4年後期の授業料確保のために懸命に働いていた。
休憩室でおばちゃん達とお茶を飲んでいると、
一人の若い男が入って来た。
左手を掴んでいた。
「武藤君どうしたの、あっ、手切ったの!」
山田のおばちゃんは救急箱を取り出して手当し始めた。
「草刈りしてたら手が滑って切ってしまった」
左手の小指の下辺りを鎌で切ったらしい、かなり血が出ていた。
山田は消毒し化膿止めを塗って包帯でしっかり巻いた。
「もうちょっとやる事が残ってるんだけど・・」
ひ弱い声で武藤正が言った。
「ドッグランのとこだよね、茜ちゃん行っといで、
トイレは私らがやるから」
そう言われて茜は武藤を見た。
汚れた作業服を着た今まで見てきた男の中でトップクラスで
ダサい奴やなと思った。
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