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「ん……」  翌朝、目が覚めると念珠郎はいなかった。  布団も服も乱れておらず、体も汚れていなかった。 「夢……?」  そう思うほどに、昨日の痕跡はどこにもない。  ただ、体の中に、何か今までなかったものが混じっているような、そんな感覚だけが残っている。  起きて服を着替え、洗顔や朝食を終えた頃に、貫子が離れを訪れた。  果物を抱えて、「おはよう、希くん」と微笑む。 「貫子さん、おはよう」 「また本郷さんのお宅にお邪魔してくるわね。長居すると思うけど、心配しないで」 「はーい、いってらっしゃい」  いってきます、と去っていく貫子を眺めながら手を振る。  ぽかぽかとした陽気と、のんびりとした空気が心地良い。  昨日のことは頭から追い出して、両手を上に伸ばしながら和室に入った。 「希」  いきなり、後ろから腕が絡みついてきた。両腕が腹に回り、ぎゅっと抱きしめられる。 「っ、念珠郎」  念珠郎の体に包まれて、一気に心音が大きくなった。  どきどきする希の耳元で、彼は再び名前を呼んだ。 「希」  ぞくっと背筋が震え、体の奥に火を灯される。  その火は次第に勢いを増して、体がどんどん熱くなっていく。  戸惑う希の呼吸は乱れ、肌がびりびりし始めた。 「はあっ……なに、これ……っ」  昨日と同じような感覚に困惑する。薬は飲んでいないのに、どうして、と焦りと恐怖を感じた。  前を確認すると、そこは硬くなって布を押し上げていた。 「昨日、希のここに、俺の霊力を注いだんです」 「あっ」  念珠郎は希の下腹部を撫でながら、壁際へ移動する。  希の手を壁につかせて、尻を後ろに突き出すような体勢にさせた。 「ここに熱いのを感じたでしょう?」  下腹部をくっと軽く押された。  希は火照った体を無意識にくねらせる。  うなじに熱い息が当たる。念珠郎の手がズボンにかかり、下着も一緒にずり下ろされた。 「念珠郎……!」  直接肌の上を滑る指が、また下腹部を押してくる。ただそれだけのことなのに、じわっと快感がそこから腰に広がった。 「んっ、押さ、ないで……っ」  一定間隔で下腹部を押されて、熱がどんどんたかぶっていく。  彼から与えられる刺激に呼び起こされるように、昨日熱を注がれた場所がじんじんしてきた。
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