273人が本棚に入れています
本棚に追加
5
暗い中、布団の上で天井を見上げる。静かな夜は、考えたくないことばかり考えてしまい、何度も寝返りを打った。
頭の中に、寺で会った男性の言葉がよみがえる。
人間じゃないものと交わり、その相手と強く結びついている。その結果、僕はどうなるんだろう。
考えてはいけない部分に足を踏み入れるような恐怖が、胸をかすめる。
怯えながらも、それでも、念珠郎を愛しく思う気持ちに嘘はない。
最初の頃は、見えない何者かの気配が怖ろしかった。が、彼の優しい行動に触れて、見えなくとも一緒にいる空気が徐々に愛おしくなった。
そうだ。念珠郎を受け入れると言ったのは僕だ。それを後悔はしていない。
そう思った時、寝室の襖が開いた。念珠郎が入ってくる。部屋は暗くて、端正な顔は見えない。
「念珠郎?」
希は上半身を起こした。すぐ近くに、念珠郎が座る。
彼の手が肩を押してきた。布団に倒される。
念珠郎は、無言で希にまたがった。ひんやりとした手を、頬にそえる。
「希、今回は嘘をつかないでください。本当は、寺で何かあったのでしょう?」
「……気づいてたの?」
「希は嘘が下手ですからね。それに、人とは違う匂いも残っていますから」
「匂い? 僕、風呂入ったけど」
「風呂では落ちない匂いです。何と会ったんですか?」
頬を撫でながら、教えてください、と言う。その甘くて優しい声は、不思議な魅力を持っていて、力が抜けそうになる。
最初のコメントを投稿しよう!