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「これは、あの薬の副作用です」 「んっ……はあっ、副、作用……?」  念珠郎の手は頬から喉、胸を伝ってどんどん足のほうに移動していく。  身じろぎをする希のたかぶった熱に、ついに手が触れた。 「ああっ……!」 「俺が助けてあげますよ」  そこを手のひらで撫でられ、腰がくだけるような快感に襲われる。  自分でも知らないような甘い声を漏らす希を、目を細めた念珠郎がじっと見ていた。  希の反応を楽しむように、念珠郎は服の上からそこをもう一度撫でた。  体が跳ねる。気持ちよくて、苦しくて、切なさが胸を締め付ける。  念珠郎の手が服にかかった。脱がせようとしてきたので、希は慌ててその手をつかむ。 「だ、だめだ」 「何でですか?」 「恋人じゃない、のに、こんなこと……っ」 「それは人間のしきたりでしょう」  人間じゃない自分には関係ない、というような口ぶりだ。  希は潤んだ瞳で念珠郎を見上げ、首を振った。 「君が、好きだから……っ、あとで絶対に、後悔する。君にとっては……はあっ……ただの助ける行為でもっ、片想いをしてる僕にとっては、辛いんだ」  胸から湧き上がって唇からあふれた言葉に、希は自分で驚いていた。  自分でも意識していなかった「好き」という感情は、すっと体に溶け込んだ。  そうか、僕は念珠郎が好きだったのか。  自分の気持ちがわかった途端に、心臓が爆発しそうなほど大きな音を刻みはじめた。  念珠郎は軽く目を見開いた後、嬉しそうに微笑んだ。 「俺も、希に恋心を抱いてるので、両想いですね」  念珠郎が昨日のように覆いかぶさってくる。  彼の言葉をまだ咀嚼しきれていない希に、秀麗な顔を寄せた。 「んっ」  距離がなくなって、唇が重なる。  下唇を吸ってくる念珠郎の唇は、とても甘かった。 「ん……っ」  舌が口の中に入ってくる。昨日よりもたっぷりと味わうように口内をかき混ぜられ、背中をぞくりと熱が駆け上がった。  口が解放され、浅い呼吸を繰り返す。  念珠郎が鼻を軽く擦れ合わせてきて、お互いの息が混ざる。 「希、俺を受け入れると言ってください」  とろけるような声が鼓膜を揺さぶる。 「そうしたら、これを楽にしてあげます」  念珠郎が、刺激するような手つきで、希の熱を撫でた。びりびりと腰に電流が溜まる。 「はあっ……本当に、念珠郎は、僕が好き、なの?」  確認するようにそう訊けば、念珠郎は美しく笑って口付けてきた。 「好きですよ……だからこうしてるんです」  ちゅっと音をたてて、念珠郎が唇を離す。  甘い言葉と行動に、先ほどから早鐘を打っている心臓がさらにうるさくなった。 「……僕、は……念珠郎を、受け入れる」  契約を結ぶような言葉を口にした瞬間、念珠郎が今までで一番の笑顔を見せた。欲しいものを手にしたようなその顔に見惚れる。
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