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【00】プロローグ
徹底したサービスと快適な空間の追求だけではなく、時代の流れも取り入れる柔軟な姿勢によって世間から高く評価されている老舗、バードグランドホテル。
ガラス張りの近代的な高層ビルが周囲に増えるほど、開業当初の面影を残したレトロな外観が洒落ていると注目されるようになり、通りすがりにスマホで撮影していく若者も多い。
最上階となる15階は、披露宴やパーティーのための貸し切りフロアとして有名なのだが、それには理由があった。
生存競争の激しい都心にありながら、太い根を生やしているかの如く生き残り続けてきたホテルは縁起が良いとして、ゲン担ぎに利用したがる政財界の者や大物芸能人が後を絶たないのだ。
そして今夜は、急成長を遂げた不動産会社「浦間開発」が、関係者への感謝の気持ちを込めて盛大にパーティーを開催する予定となっていた。
午後7時23分。
15階のエレベーターホールの壁際を埋め尽くす豪華なスタンド花には、それぞれ有名企業や著名人から贈られたことを示す札が、誇らし気に立てられていた。
澄んだ高音を鳴らし、エレベーターが最後の招待客の到着を知らせる。
ドアが開いて現れた上等なスーツ姿の男性は、そのまま正面に進んで受付を済ませると、周囲に並ぶ名前を興味深そうに見回しながらスタッフに案内されて行った。
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