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「つ、つまりだな、浦間社長が叫び出した理由は、彼にだけ、あ~、すでに殺された……この世にゃいない被害者の亡霊が、本当に見えちまったからだと思うか?」
そんなアズミの声と表情があまりにも頼りなく「浦間社長が殺人事件に関与しているのかどうか」ではなく「亡霊が見えたのかどうか」という点にこだわっていることにも違和感を覚えた部下は、ある質問を試みた。
「あの……班長」
「……ん?」
「もしかしてオカルトや怪奇現象の類いが、大変苦手なのでしょうか?」
その途端、あからさまにアズミが強がり始めた。
「あ?俺が?怖い?まさか!遊園地のお化け屋敷だって余裕で入れるぞ!たっ、ただし歩くのが面倒だから、乗り物に乗って移動するタイプ限定だけどな」
「もしかして乗り物に乗った後は、最初から最後までずっと目を閉じたまま周囲を一切見ないで移動していませんか?」
25歳の部下から鋭く指摘されてしまい、40歳の上官がうろたえる。
どうやら図星だったらしい。
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