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02.おや、おや、親!?
「…はい、もしもし。なんね?お母さんね?どげんしたと?」
仕事帰りの途中、翔平に頼まれた食材を買い物袋にぶら下げて歩いていた
ら、おもむろに実家から電話がかかった。
「どげんもこげんもなかったい!何ね、あんたは、盆も帰って来んと思う
たら、電話の一本もよこさんで、元気にしとるとね?まったく」
九州の田舎の母親からの電話だった。
おおかた、口下手な父にでもつつかれて、私に電話をしてきたのだろう。
役職についてからというもの、ただでさえ帰る機会を失っていたのが、最
近では生活環境的に帰る気持ちも薄れがちとなり(まさにリア充)。
ついつい、実家に電話するのでさえ、忘れがちになったいた。
「お父さんも心配ばしとるとよ?あんたは、二十六にもなりよーとに、料
理もなーんもできんじゃろ?そげん女の子が、ただでさえ不規則な生活ば
しよるのに、ちゃんとご飯ば食べよるやろか?て、心配ばするたい」
「二十六の女の子て…、いつまでも子供じゃなかとよ?自分のことは、自
分でちゃんとしよるたい。」
あーあ、田舎の両親と話すと、つられてこっちも方言が復活してしまう。
私は途中の公園でベンチに座り、荷物を降ろした。
受話器の向こうで、聞きたくもないブツブツが聞こえてくる。
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