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つむりは、しぶしぶと弁当を開ける。
弁当は楕円形の形に二段重ねとなっており、一段目が山菜の炊きこみご飯。
二段目がおかずとなっており、ふっくらと焼き上がった卵焼きに、ピーマン
の肉づめ、大根と人参の金平に、ベーコンのアスパラ巻きが、隙間なくつめ
られていた。
「これを…彼氏さんが?そこらへんのお店の弁当より、美味しそう…」
深いため息のあとの、後輩たちの視線が痛い…。
ほんと、すごいよねぇ…、つむりの彼氏、しかもイケメンだし。
“やめてくれぇぇぇ”思わず声にならない叫びを同僚の安子にしてしまった。
「はっ!?今、津村さん、イケメンて、いいました?イケメンなんですか?」
魔法の呪文でも覚えたみたいに、後輩たちの興味は、弁当から先、つむりの
彼氏の外見にいってしまった。
「イケメンなのに、料理上手なんですか?しかも、イケメンなのに、弁当
まで持たせてくれるなんて…どんだけ女子力高いんですか?片野主任」
つむりは、この時、今までの経験上、この上なく泣きたくなる。
それは、いつも自分を表面上しか知らない人間たちの勝手な妄想に祭り上げ
られたあとの、あの梯子の外しっぷりときたら…。
キラキラした目が、腐った魚のような感情の失せた瞳に変わる、あの瞬間。
また私は、あんな思いをこれから味わうのだろうか?つい、安子のことを
ギラリと睨みつける。
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