プロローグ

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安子の方は、そんな私の視線を気にも止めず、両手を小さく広げ。 ほらほら、あんたの彼氏をご開帳してやんな!と、言わぬばかりだ。 “くそがっ!”聞こえないくらいの心の声を吐く、そんなつむりの感情を よそに、後輩たちが“画像!画像!”と目を輝かせる。 「えーと、えー…あったかなぁ…最近撮ってないしなぁ…」 「大丈夫です。前のやつでも何でもいいです」 後輩たちは、ハモるように、スマホに顔を近づけてくる。 「…はぁ」  つむりは、観念したようにスマホの待ち受け画面を黄門様の印篭のよう に、かざす。 「……おおーーーーーっ…」 デスクに広がる感心のため息…静まりかえる昼食時の社屋。 …ひとりの女子社員が、つぶやく。 「カッコいい…てか、カッコかわいい…」 「あれだよね…俳優の斎藤 健っぽくない?髪もう少し長かったら、間違 えられそう…」 「ウソ…こんなイケメンが…主任の…もの、なんて」  安子も覗きこんで、ため息をつく。 「何でかなぁ…彼氏なんだよねぇ…」 “あんたたちね!”つむりは、思わず言いたくなる。 私だって、自覚してるわよ!って、言いたくなる、けど、言わない。 「ランチ…行こう」 後輩のひとりが、少し項垂れたように出入口の方に向く。 他の後輩たちも、それに習ったように歩きはじめる。 “助かった…”つむりが思った瞬間。 「片野さん、今度、しっかり出会ったキッカケを教えてもらいますから! 時間空けといてください。あと、合コン、絶対っセッティングしてくだ さい!!幸せは、分け与えるものですよね?」 「うええーっ!?」 思わず、へん顔を見せてしまった。 出会ったキッカケなんてぇぇぇぇぇぇ__。
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