1、イケメン彼氏は突然に?

3/9

51人が本棚に入れています
本棚に追加
/73ページ
確かに店を訪れてから一時間半弱。 私はマスターにお任せカクテルを3杯ほどお代わりしたあとに、甘めのカ クテル、キューバ・リバーを2杯ほど、一気にあけた。 コーラの炭酸とホワイトラムのアルコールが口当たりもよく、つまみのピ ーナッツ盛りの塩気が無限ループに陥れていたからだ。 「はぁい…マスター。あと、一杯だけ、一杯だけ、お任せでぇ…そしたら 今夜は、止めるからぁ」 「…もう、この娘ったら、じゃあ、軽めの作るからね?」  マスターは、やれやれと言った顔でカウンターの奥の冷蔵庫に向かった。 私は、翔平から視線を外さぬまま、ありがと、と返事して、彼の次の言葉 をそのままの体制で待った。 “スカした顔しやがって…どうせなら、怒った顔でも見せてみろ…キレイ ごと言う奴に限って、内面は薄っぺらいんだ”  主任に抜擢されてからの、つむりは、その頃、社内の急な人間関係の変 化に戸惑っている時期でもあった。 表だっては噴出してこないが、明らかに女性スタッフ間の妬み嫉み、同期 の男性スタッフからは“何で、同期の女に指示を仰がなければいけないん だ?”と、不満の空気を感じた。  直属の上司に相談すれば、ふたこと目には。 「おまえの努力は、みんなわかっている。わかっていても、認めたくない 気持ちに最初はなるもんだ。おまえが結果を出さば、おのずと周りも変わ る、期待されているんだ。おまえは」 と、相談したのに、プレッシャーというお土産をつけて、私を突き放す。 いつの時代の考え方だ?これだから、昭和の男は嫌いなんだ、精神論ばか りふりかざす、全く効率が悪い…。  周りの毒に耐えているうちに、つむり自身も内心、毒づいてしまう考え 方が構築されてしまった。 そんな自分が心底嫌いだったが、そうしなければ胃に穴が空きそうだった。 そんな頃だ、本戸 翔平という彼に出会ったのは。
/73ページ

最初のコメントを投稿しよう!

51人が本棚に入れています
本棚に追加