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「わっ…」
「おいっ!」
酔いが残っている足は、うまく地面を踏めず、さらにヒールがグキリとバ
ランスを崩させて、支えようとした翔平の手も間に合わず顔面から壁にす
り寄るようにして倒れてしまった。
「あたたたた…」
「大丈夫かよ?」
「うん、大丈夫。平気、平気…へへへ」
「…あ」
「…あ?」
「…あーあ」
「…あーあ?」
同じ表情で、固まる翔平とマスターを見合せながら、つむりも、遅れて気が
ついた。
額の左側が、擦り傷となって熱く、手をやると出血していた。
おそるおそる目の前に自分の手をかざす、つむり。
左手の半分以上が、ほぼ真っ赤に染まっている。
「大丈夫か?」
「つむちゃん、大丈夫!?」
視界に映る二人の顔。
私は、血が苦手だ…とくに、自分の血は苦手…だ。
「はは…大丈夫、大丈夫、です。」
何とか立ち上がろうとした。
ボクシングの試合みたいなイメージで、立ち上がってファイティングポーズ
でもきめて、安心させなきゃ、と思った。
「大丈夫、大丈夫、大丈夫…じゃ、ないか、も」
私の意識は、そこで、なくなった。
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