国体連続出場に「待った」

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国体連続出場に「待った」

後出しジャンケン。それは最も卑怯な手で勝つ手段。スポーツとは、フェアであるべきなのに、国体の代表を決める県大会が終わった後で、後出しジャンケンが行われた。 彼…桧山四郎は、S県の国体代表を決める県大会で二年連続優勝した。しかし、S県のスキー競技連盟は、彼を国体代表から引きずり降ろそうとした。 理由は、本籍がF県にあり、S県には住民票があるだけだからという理由である。しかし桧山四郎は、黙って納得するほど大人しい男ではなかった。 「正社員としてS県に居住し、住民税も納めているのになぜ代表資格がないのですか。県大会の募集要項には、本籍地に関する記載はないでしょう?」 S県のスキー連盟の会長は四郎を手招きして呼び、耳打ちする。 「君は世間を知らなすぎる。本籍地に触れないのはあれだよ…。最近は人権とやらで差別がどうとかうるさいだろう?だから募集要項におおっぴらに書けないのだよ。君の本籍地はF県だろ?F県の県大会に出たらいいじゃないか。まあ、F県は強豪だから君には代表は無理だろうがね」 「それなら、県大会が始まる前に仰ってくださればいいじゃないですか。なぜ今になってこんなことになるんですか!?」 「去年も君の本籍と住民票の県が違うことが問題になったんだよ。しかし結婚して所帯を持つまで本籍は親元に置いておくことは一般的だとして、不問とした。何より君は二位以下に圧倒的な差をつけた。今年もだ。しかし、それが二年続くと面白くない人間もいるのさ」 「俺はいったいどうしたらいいんですか?もう間に合わずに、F県の県大会に応募出来ないというのに」 「スポーツと政治は無関係だなんて、所詮戯れ言だよ。私は君のことを買っている。でも、もう私じゃ庇い切れない。ここに県議会の先生方の連絡先をまとめてある。後は君自身で戦ってくれたまえ」 S県のスキー連盟会長は、茶封筒に入った書類を四郎に手渡した。
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