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やぁ、おはよう。気分はどうだい?君は今日も相変わらずの美しさだ。
最近はここまで来るのも辛くなってしまったな。僕は君みたいに若いわけではないから、ここに毎日通うのも大変だ。
あぁ、気を悪くしないでくれ、そんな気はなかったんだ。すまない。
でも、仕事帰りにここによって君と話して家に帰っていたあの頃より、今のほうがのんびりできているよ。今じゃ仕事もしなくていいからね。
ふぅ。椅子に座るたびに体が軋むよ。
あぁ、そうそう。君にプレゼントを持ってきたんだ。君の好みではないだろうけど、これを見た時に君がこれを着ているのがパッと浮かんだんだ。
とても似合ってたからつい買ってきてしまったよ。着せてあげよう。
あぁ、やっぱり赤色は君に似合うね。少々高い買い物だったが、美しい君のためだからね。
真っ赤なパーティドレスを暗い部屋の中で、ここまで美しく魅せられるのはやっぱり君だけだよ。君の美しさにも、さらに拍車がかかっている。
ふわふわした軽い黒髪も、細く長い手足も、しっかりとした姿勢も。
でもやっぱり、一番美しいのはその瞳だよ。凛として、何が寄ることを赦そうとしない強い瞳だ。
もちろん、他にももっとあるさ。でも言わないんだ。
すべて口に出してしまったら、それ以上に君を美しいと言える言葉がなくなってしまうと思って。
本当に、大変だったんだ。君の望みに応えるのも。
別に嫌だったわけじゃないんだ。一番愛しい君を一番美しいままで見ていられるし、それは君の望みでもあるんだから。
ずっと愛しい君を、ずっと美しいままで。
こうして今、一緒に日々を過ごすことができるのは嬉しいよ。
君の横顔が好きなんだ。その瞳で、僕のことなんか視界に入れさえしないような、どこか物憂げに考え込んでいるような顔が、とても美しい。
君は女性の大人っぽさが前面に出ている。素晴らしい魅力。妖艶な雰囲気。
あぁ、埃が付いている。拭いてあげよう。
あぁ、指先にヒビが、埋めて、塗りなおそう。
あぁ…君はもう、年を取らない。
姿だって変わらない。変えさせやしないさ。
僕がいる限り、その恐ろしく魅力的な美しさも、衰えはさせない。
それが君の望みで、
僕が叶えたんだ。
あぁ、懐かしいな。もう何十年前だろう。
あの時二人とも制服だったね。懐かしいよ。
君が僕に言ったんだよ。だから僕が叶えたんだ。
一言一句違わず、昨日のことのように覚えているさ。
僕が叶えたいと、君のために。
叶えてあげたいと思ったんだ。
でも、僕が死んでしまったら、君を知る人はいないんだね。
美しいものは、誰の目にも触れないまま、ひっそりとなんて、少しもったいないかな。
一つ最後に、こんな老いぼれの頼みを聞いてはくれないか。
僕は君に酷い事をした。
それが君の願いだとしても。
それでも赦してくれ。
僕は、君の隣で死にたいんだ。
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