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うっすらと流れた涙を枕の布で拭っていると…寝室のドアが開いて廊下の照明が真っ暗な寝室を照らしている。
寝たふりを決め込もうと、あたしは布団を頭までかぶったまま微動だにしなかった。
掛け布団に隙間があいて、綾人が横へと寝転んだ。
「明里?起きてるか?」
優しい声のトーンが、うるさい。無視を決め込んだ。
布団が擦れ合う音と共に綾人の腕があたしの体に回った。
背中に伝わるぬくもり…それはいつもと何も変わらないのに…今は、綾人がとても遠くに感じるんだ。
少しだけ寝返りをうったふりをしようと腕をずらそうとしたけど、綾人は抱きしめる腕の力を緩めようとはしない。
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