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今現在3月5日午前1時54分
私は今ものすごく驚いている。いや私でなくても驚いたはずだ。何せ、雛人形が動いているのだから。それも深夜2時の丑三つ時に、
「い、いやーー」思わず叫んでしまってせいでお父さんが起きてきた。「大丈夫か!小夜!」「お父さん、いま、雛人形が!」「雛人形がどうかしたのか」そうしてお父さんと一緒に人形の方をみる。あれ、さっきまであんなに動いていた人形は定位置に座っていた。動いていた気配など微塵もない「え、えー?」「なんだ、寝ぼけてたのかじゃ、もう寝るぞ」「ちょっとお父さん」呼び止める間も無くとこに着く父親。恐る恐る人形の方へ向くとそこには困ったような顔をした人形たちが一列に並んでいた。「いやっ」と叫ぶ間も無く私の方を抑えたのはお内裏様だ。
「奇声をあげるな小娘、これは極秘の任務だ。丁重に扱ってもらわねば」なんだなんだ小さいくせに態度はでかいぞ。
「まぁまぁ、ただでさえ美しい人形の妾たちじゃ、動作もつけば何者も驚くに違いない、その気高く尊さになぁ」とドヤ顔でどちらを向くお雛様。「そうじゃろう?妾たちの美しき舞に心を奪われていたのじゃろう?」
は、はぁ?なんだこいつら、どっからツッコンでいいのかわからない。取り敢えず調子を合わせておく「そーですね、妾様たちの美しさに心を奪われていました、それでなんのようですか簡潔に、手短に、お願いします。」
「なんだ、拙者らのことをよく理解しとらん小娘だな、拙者らは貴様が生まれた時から厄を受けてきたのだぞ、貴様がいま健康でいられるのも拙者らのおかげ「はーい、すごいです、すごいです、で、さっき極秘がなんちゃら言ってましたのよねなんですか」
どうやらこのお雛様とお内裏様はおそろしく自信過剰で自己肯定感の高すぎる方々だそうだ。今まで抱いていたお雛様のイメージ全然違った。まぁ、口調とかはイメージ通りだったけれども。しかし、思った以上に人間臭い、そのせいか人形と話しているという感覚は薄れていった。
「妾らの願いはただ一つじゃ、ずばり今夜、午後4時までに妾達を箱にしまって欲しいのじゃ」
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