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2.
光森唯奈と新矢覚。
この二人は、元々同じ少年野球団に所属していた。
唯奈は大砲と呼び声高い四番打者で、新矢はエース級のピッチャーである。
名打者と名投手。互いに意識せずにはいられない、戦友な間柄だったのである。
そんな二人は、少年野球の練習後にある勝負事をしていた。
新矢が5球投げるうちに唯奈が何本ヒットを打てるかという対決で、二人はそれを“勝負”と呼んでいた。
通算成績は、50勝49敗。新矢が1勝リードしていた。
やんちゃな小学生ともなると、勝負事には事欠かない。ジャンケンに始まり、鬼ごっこなどの児戯に加え、駄菓子屋での当たりくじ対決。
あらゆる勝負事で競い合った唯奈と新矢だが、例の“勝負”以外で特に夢中になったのは、駄菓子屋前にある謎のカプセルトイ対決だった。
二人がよく通う駄菓子屋の前に昔から置かれていた謎のカプセルマシーン──スライムやキラキラの石などのカプセル玩具をごった煮に詰め込んだ代物──で、どちらがより良い景品を引き当てるかを競う勝負だった。
その日先攻した唯奈はどどめ色のスーパーボールを引き当て、新矢は「微妙」と嘲笑った。
そんな新矢が引き当てたのは、謎のゴム人形だった。
昔懐かしいキン消しのパロディ商品みたいなそれを見て二人は沈黙。その後に唯奈は「びみょー!」と腹を抱えて爆笑したのである。
「この勝負はあたしの勝ち!」と胸を張る唯奈に、新矢は何も言い返せなかった。
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