7人が本棚に入れています
本棚に追加
第壱帖 麗らかな日に
蒼穹に、柔らかな陽射しが降り注ぐ。桃の花のピンクが目に優しい。膨らみ始めた白木蓮は、今にも笑い出しそうだ。
先日、最後のお役目を終えた私は大きく背伸びをした。もう、重すぎる十二単や、気に入らない髪型も必要ない。生まれる前から決められていた夫からも自由。そして侍従達からも。
「妻よ、思えば長いご縁だったな」
束帯装束に身を包んだ夫はそう言って微笑みかけた。
「ええ、これからはお互いに自由を楽しみましょう」
私は微笑み返す。
「私は新たな恋を楽しもうと思う」
「あら、素敵!」
「実は、三人官女の内の一人が気になっていてな」
「あらあら、ここは大勢の者達がいるから、早めに捕まえないと大変よ」
「うん、今から声をかけてくる」
「検討を祈るわ!」
颯爽と去って行く元夫。着替えずに行くのかしら。まぁ、鉄は熱い内に打て、て言うしね。実ると良いわね! 既に、侍従達は私たちに挨拶をした後、我先にと自分が興味ある場所へと散らばって行ったわ。
さぁて、私はまず、洋装に着替えたいわ。ビクトリア調のドレスが素敵ね。希望者の列はあそこね。
男女を問わず、かなりの者が列を作っているのね。この後は、長過ぎる髪を切ってパーマをかけたいわ。ヘッドスパとやらも受けましょう。あ、着替えの前にエステもいいわね。
その後は花札や麻雀なんかもやってみたいわ。ロッククライミングも興味あるわね。
あぁ、色々やりたい事があってワクワクしちゃう!
最初のコメントを投稿しよう!