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その日は、半日で学校は、終わりだった。
体調不良で休んでいた僕のことを心配して学校の帰りに征一郎が、僕のところへと立ち寄ってくれた。手土産に僕の好きな、外苑の街にあるケーキ屋さんのクッキーを買ってきてくれたので、僕は、お茶を入れた。
いつになく、無口で、好きなお菓子にもあまり手を出そうとしない僕に、征一郎は、向き合って椅子に腰かけて、僕が話し出すのを、ただ、黙って待っているようだった。僕は、何から話すべきかと考えていたのだったが、なんだか、考えている内に頭の中がっぐちゃぐちゃになってきて、不意に、僕の頬を涙が伝い落ちた。征一郎は、泣き出してしまった僕をそっと抱き締めると、あやすように優しく背中を叩いてくれた。その温もりに包まれて、僕は、余計に涙が溢れて止まらなかった。
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