5 真実と魔王とプロポーズ

6/9
前へ
/149ページ
次へ
しばらくして、僕が落ち着いてきたのを見計らって、征一郎が言った。 「真弓、俺のパートナーになる気はないか?」 「えっ?」 僕は、驚いて顔を上げて征一郎のことを見た。征一郎は、いつもと何も変わらない様子で僕のことを見つめていた。僕は、顔を赤らめて、視線をそらした。 「何、急に」 「急じゃない。前から、ずっと思っていたんだ」 征一郎は、僕の手を取って、僕を、熱い眼差しで見つめて言った。 「どうか、俺のパートナーになって欲しい」 「征一郎」 僕は、征一郎の手をそっとほどくと、言った。 「だめだよ、僕なんて。だいたい、僕は」 「あの二人と何があったのかは、聞くつもりはない」 征一郎が言うのを聞いて、僕は、打たれたように、はっと顔をあげた。征一郎は、ため息をついた。 「やっぱり、あの二人に何かされたんだな?」 「あっ・・」 気まずい雰囲気に、僕は、言葉を探していた。 「あの・・二人とも、自分達が何をしてしまったのか、よく理解していないみたいだし、僕は、二人を許したいと思っているんだ」
/149ページ

最初のコメントを投稿しよう!

584人が本棚に入れています
本棚に追加