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「頼む、真弓、俺と一緒に、生きてくれ」
「征一郎」
僕が頷きかけた時、急に、ドアが蹴破られ、あの二人が姿を現した。二人は、僕たちに駆け寄ると、その間に割って入ってきた。天音が、征一郎の胸ぐらを掴んで、言った。
「お前、何、人のものに手を出そうとしてる!」
「征一郎!やめなさい、天音くん!」
僕が二人を止めようとするのを、奏が、後ろから羽交い締めにしてきた。
「先生は、口出ししないで。これは、俺たちの問題だから」
「なんとか言ってみろよ、魔王 グレイザ」
天音が征一郎を締め上げているのが見えて、僕は、なんとか二人を止めようと奏の腕から逃れるために体を捩ったが、奏は、ぎゅうっと僕を捕らえて離そうとはしなかった。
「離しなさい、奏くん!」
僕は、叫んだ。
「征一郎!」
突然、天音に詰め寄られてうつ向いていた征一郎が低い笑い声を漏らした。そして、征一郎は、天音の腕を振り払って、言った。
「相変わらず、うざい奴等だな」
顔を上げた征一郎の瞳の色は、血のような赤、だった。
まさか。
僕は、自分の目が信じられなかった。
征一郎は、にっと笑った。
「お前たちの花嫁は、この魔王 グレイザが貰い受ける」
「はい?」
僕は、呆気にとられて、その場に立ち尽くした。
征一郎も?
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