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「正体を現したな、このエロ親父!」
天音が征一郎と僕の間に立ちはだかった。征一郎は、緩んだネクタイをっきちんと絞め直してから天音の方を見て言った。
「誰が、エロ親父、だ。このガキが」
「グレイザ、なぜ、お前がこの世界に転生している?」
奏がきくと、征一郎は、事も無げに、答えた。
「あの性悪女神と取引をした。お前たちの花嫁を私が奪うことが出来たなら、あの世界の全ては、この私のものとなる」
「マジか」
天音が舌打ちした。
「あの女、ふざけた真似を」
「言っておくが、花嫁の石は、私も持っているのだよ」
征一郎、こと、魔王 グレイザが、白い玉を指で摘まんで、僕たちに見せた。
「お前たちの石だけでは、真弓を完全に花嫁の体に変えることはできない。私のこの石がなければ、花嫁は完成しない」
「ちょっと、待った!」
僕が叫ぶと、三人とも、僕の方を注視した。僕は、奏の腕を払って、征一郎の方へとすたすた、歩み寄ると、石を奪おうとした。が、征一郎は、僕の手の届かないところへと石を遠ざけて言った。
「これが欲しいのか?真弓」
征一郎は、僕に囁いた。
「すぐに、望みは、叶えてやる」
征一郎にそう言われて、僕は、頬を上気させていた。征一郎は、ふっと笑って、そのまま、姿を消した。
「あの野郎!」
天音と奏が、どたどたと僕の部屋から出ていった。
一人になった僕は、呆然として、呟いた。
「本当、だったんだ・・」
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