6 憂鬱な花嫁と魔王の告白

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天音と奏の件があった後、僕は、征一郎にプロポーズされていた。 それは、一生を一人ぼっちで過ごすことを覚悟していた僕からすると、すごくうれしいことのはずだった。たぶん、あの二人のことがなければ、即答で受け入れていたのかもしれない。 征一郎は、落ち着いた雰囲気のイケメンで生徒からも教師からも慕われているような人物だった。なんというか、少し、古いタイプの男だった。僕が重い荷物を持っていれば、さりげなく、荷物を持ってくれたりと、その仕草がいちいち、スマートだった。低い、体に響いてくるぞくぞくするような声をしていて、僕の耳元でそっと囁いてくることがよくあった。紳士というのは、こういう人なんだろうなと、僕は、今まで、思っていた。 それが。
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