6 憂鬱な花嫁と魔王の告白

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僕は、放課後に、一人で図書室にいた。 生徒達に混じって本を読んでいると、まるで、僕まであの頃に戻ったような気がしてくる。 まだ、自分の運命について、何も知らなかった、あの頃。 いつも、僕は、征一郎と二人で過ごした。 寮の部屋も二人一緒だった。 パートナーがいない者同士で、いつも、寄り添って過ごしていた。僕らは、信じられないかもしれないが、同じ部屋で何年も一緒に過ごしたが、何の体の触れ合いもなかった。 僕たちは、純粋に友情を育んでいたのだ。 だけど。 いつかは、お互いがお互いのパートナーになるのではないかという、仄かな、予感は、持っていた。 それも、もう、終わった。 征一郎が異世界の魔王グレイザだったからだ。 もう、うんざりだった。 ここしばらくは、僕は、物語も書いてなかった。 僕のことを何かの競技のトロフィーかなんかみたいに考えているあの連中も、あの連中が手に入れようとして躍起になっている異世界のことも、今は、考えたくなかった。
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