昭和大学生 夏子は謎解き男子に振り回される２

突き落とし事件

「ごめんなさいね。せっかく来てもらったのに」
「娘は嫁に行っちまったしなぁ。息子も社会人になって家を出てった。あんなババアの顔見るより、ママや美人で若いなっちゃんの顔見てた方が良いんだけどねぇ」
　社交辞令を藤田さんはまくし立て、立ち上がってお会計を済ませる。珈琲が一八〇円。ケーキが一五〇円。
　私はレジを打って、お金を受け取りおつりを返した。
「ありがとうございました」
「また来るよ」
　藤田さんは手を振ってくれた。すれ違いにお客さんが中に入ってきた。
　ドアの前でお互い少しぶつかってしまったので、「おぉ、兄ちゃんごめんよ」と藤田さんが頭を下げた。