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「そんなに見なくたって、毒なんか入れないわよ」
村井君が私の手つきを見る顔はますます、にべない。
先月彼に頂いた、時計のプレゼントのお礼を言っていないことを思い出し、お礼を口にしようと村井君の顔を見たときだった。
村井君の首元を見て、そのまま体が固まった。
(口紅……)
服に口紅がつくのは、電車などでたまにあるらしいので仕方がない。しかし、首についてしまうのは、たまに偶然つく可能性は少ないだろう。
私は視線を反らし、再びフライパンのほうを見る。ふつふつと気泡が出来てきた。そんな中、ママが「あらっ」と、変な声を発した。
「貴方、首元」
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