突き落とし事件

17/38
前へ
/149ページ
次へ
「そんなに見なくたって、毒なんか入れないわよ」  村井君が私の手つきを見る顔はますます、にべない。  先月彼に頂いた、時計のプレゼントのお礼を言っていないことを思い出し、お礼を口にしようと村井君の顔を見たときだった。  村井君の首元を見て、そのまま体が固まった。 (口紅……)  服に口紅がつくのは、電車などでたまにあるらしいので仕方がない。しかし、首についてしまうのは、たまに偶然つく可能性は少ないだろう。  私は視線を反らし、再びフライパンのほうを見る。ふつふつと気泡が出来てきた。そんな中、ママが「あらっ」と、変な声を発した。 「貴方、首元」
/149ページ

最初のコメントを投稿しよう!

319人が本棚に入れています
本棚に追加