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 村井君のお父さんとは、何回か面識があった。私の姿を見つけると、こちらまで駆け寄ってきた。 「久しぶりだね。よく来てくれたね」  村井君のお父さんは目に小じわを寄せながら微笑む。少し年を取った気がした。そして少し太った。ベルトが少しきつそうだった。けれどもジェントルマンらしき雰囲気は漂っており、やはり社長らしさはどこか滲み出ていた。 「お久しぶりです」  私は軽く一礼した。 「彼女と付き合うことになりました」  村井君が固い口調で報告する。すると村井君のお父さんは目を剥いた。 「そうだったのか。良かった。そうなれば良いなと私は思っていた。夏子君、こんな息子だけど宜しく」
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