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「だから首元の口紅は分かってくれたか?」 「えぇ」  彼がここに私を連れて来たかった理由もよーく分かった。彼女のルージュと同じ色だった。安心した反面、複雑な気持ちだった。あの女性は科を作るタイプだ。  一体、どれだけモテるのだろう。平凡な私は凄い人を好きになってしまったと、改めて実感した。それにこの空間にいるのも、不思議だ。普段なら入ることが出来ないお茶会なのだ。  私が呆然としている間にも、スチュワーデスは前川製菓の焼き菓子を試食し紅茶を嗜み、男性社員らとの会話を楽しんでいる。若い独身男性ばかり厳選したのも、村井君のお父さんだ。お父さんは、出会いの場を与えたのだろう。
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