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「…源次郎さんがですか?」
「あぁ、正確には多分そうだと思うんじゃが。…何せ世間とは関わりを寸断してるからのぅ、あいつが訪ねて来たことに気が付かんかった。玄関に手紙だけ残して帰ったようで。」
「手紙!?それ見せて貰えます?」
「この部屋のどっかにあるはずじゃ。儂は、あいつを許しまいと封も開けずに部屋に放り捨てた。」
「…この部屋…ですか…。」
圭介はゴミやら衣類やらで床が一切見えない部屋をライトボックスの複数のカメラで確認し、溜め息をついた。
「…好きに探してくれや。」
「栗村さん。」
関内がハンカチで口と鼻を押さえながら部屋に入ってきた。それを見た老人はゆっくりと立ち上がり、遺体に手を振った。
「…高梨さん、すみません。私は栗村さんを連れていかねばなりません。今パトカーも要請しましたので。」
「…そうですよね。」
「刑事さん、すまないねぇ。母ちゃんだけは丁重に葬ってやってほしい。儂の最後の願いじゃ。」
老人は頭を下げて、両手を前に出した。関内は、そっと手を重ねた。
「手錠は掛けません。栗村さん、遺体遺棄の現行犯で逮捕します。」
関内は老人の手を引き、家から出ていった。
圭介は残された遺体をじっと見つめた。
「…高梨さん?」
桜庭が心配そうに声を掛けた。
「…あ、いや…何か人の死を間近で見てしまうと…今の自分と重なって見えてしまって…。」
「何言ってるんですか!高梨さんは死にません!私が死なせたりしませんよ!…ほら、源次郎からの手紙探してください。」
圭介は自然と流れた涙を拭い、モニターを見ながら静かに手を合わせた。
「…よし、やるか。…あ、でもこの後警察がこのご遺体を引き取って鑑識やら何やらが来ますよね。いじらない方が…。」
「法律上、警察組織よりも国民捕獲官の方が上です。ターゲット確保のためですから、ご自分の納得いくようにやっちゃって大丈夫ですから。」
「わかりました。」
圭介はまず、部屋のどこら辺に手紙があるかを推測し始めた。
手紙は玄関にあった、そして手紙はこの部屋で捨てたと言っていた、つまりは玄関側から歩いてきて、きっと宛名を確認して捨てたはず。
そう考えた圭介は、ライトボックスの向きを玄関側から入ってきたようにした。さっき関内を指差す時が右手だったため利き手は右手と推測し、立ち位置から右側を写しているカメラの映像をモニターに写した。
すると、同じように捨てられた手紙やら葉書やら封筒やらが山積みになっているエリアを見つけた。
圭介はすぐにライトボックスを動かし、腕を使って手紙の山を漁り始めた。
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