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桜庭は、相変わらず頭の回転が早い圭介の行動を、モニター越しに感心しながら見つめていた。
トントン。
本部の扉が開き、湯浅と葉山が入ってきた。
二人はすぐに桜庭の席まで行くとモニターに目を向けた。桜庭は背後に気配を感じて振り返った。
「あ、湯浅係長に葉山さん。どうされたんですか?」
「様子を見に来たんだよ。悪いか?」
桜庭は葉山の言い方にムッとした表情をした。
「葉山くん、そんなことよりモニター見てください。桜庭さん、高梨さんは今何をされてるんですか?」
湯浅の問い掛けに、桜庭は慌てて視線をモニターに向けた。
「栗村源次郎の祖父母の家を訪ねたんですが、そこで遺体を見つけて祖父は逮捕され、高梨さんは源次郎が祖父に書いた手紙を探しています。」
「…状況が全然わからん。」
葉山は桜庭のはしょりすぎた説明では理解できずにイライラした表情を浮かべた。
「逮捕ということは警察がもう絡んでいるということですね?」
「えぇ、関内っていう女性の刑事さんが。」
関内の名前を聞いた湯浅は、凄い勢いでモニターに顔を近付けた。
「…関内!?彼女はい、今どこに?」
湯浅の慌てぶりに二人は驚いた。
「えっと、多分…警察署…ですかね。」
「そうか、彼女まだこっちにいたのか。…失礼、ちょっと出掛けてくる。」
湯浅は物凄い勢いで本部から出ていった。
「湯浅係長どうされたんですかね?」
葉山は少し考え、さっきの湯浅の話を思い出した、
「すまん、俺も席を外すわ。何かあったらスマホに連絡してくれ。」
「え、ちょっと!葉山さぁん!」
葉山は雑に手を振りながら本部から出ていった。来てからすぐに立ち去ってしまう二人に、桜庭は何があったのか理解できずに頭を悩ませた。
「ありました!ありましたよ!」
突然喜びの声を上げた圭介。桜庭は、モヤモヤしながらもモニターに視線を向けた。
モニターには、源次郎からの手紙がアップで写っていた。
「中身にヒントがあればいいんですけど…。」
「そうですね、とりあえず開けてみますね。」
圭介は、それなりに慣れた手付きでライトボックスの指を動かし、封筒から便箋を取り出し、パッと広げてまたカメラに写した。
モニターを見ながら桜庭が読み上げ始めた。
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