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圭介は外部マイクに切り替えた。
「あ、あの刑事さん、ですよね?」
「んぁ、喋った!…あ、あぁ、ほれ。」
刑事は警察手帳をカメラに写した。
「邑上だ。…おたくさんは?」
「高梨圭介です。さっきも女性の刑事さんに会いまして…。」
「あぁ、関内だろ?あいつとは署が別だが、応援依頼を受けてな。何でもこん中に遺体があるんだって。」
圭介は勝手口を指差すようにライトボックスの腕を操作した。
「お?なんだ、こっから入れんのか。…うわっ、なんじゃこれ!くっせぇ。」
邑上は足を踏み入れたが、余りにひどい臭いに鼻を摘まんで一旦外に出てきた。
「うえっ!ゴミとか遺体とか、いろんな臭いが…。」
「なっさけないわねぇ!」
ライトボックスから突然桜庭の声がした。
「「え!?」」
邑上は勿論、圭介も驚いて、内部のカメラに顔を近付けた。
「すみません、高梨さん。こっちにも外部マイクがあるんです。」
桜庭はモニターに写る邑上を睨み付けながら続けた。
「あんた刑事?あんたのせいで、どんどん警察が嫌いになってくわ!…まさか、あんたじゃないでしょうね。出頭した栗村源次郎を逃がしたアホな警察ってのは!」
「…口が悪い姉ちゃんだな。…てか、今なんて言った?出頭した栗村源次郎を逃がした?…どういう意味だ。」
「高梨さん、あの手紙見せてあげてください!」
圭介は怒り気味の桜庭の指示通り、ライトボックスに握らせていた手紙を邑上に差し出した。
邑上は受け取ると雑に便箋を取り出し、中身に目を通した。
「…本当か、これ。」
邑上は驚いた表情でライトボックスのカメラを見つめた。
「さ、さぁ真実はどうかはまだ。でも、栗村源次郎が祖父母に悲痛な訴えを綴った手紙として見たら、信憑性は高いかも…私はそう思ってる。ね、高梨さん!」
「え、えぇ。…邑上刑事、あと、さっき逮捕されたおじいさんは、警察から犯罪者の家族というレッテルを貼られ、落書きや嫌がらせの対処をお願いしても断られ続けていると言っていました。」
「…ふん。…今のこの国に、犯罪者側を擁護する余裕なんてありゃしない。」
「ちょっと!!あんたいい加減にしなさいよね!!」
桜庭の怒号が響いた。
「うるっせぇなぁ!」
「あんた、本当に国民を守る立場の警察?」
「俺じゃねぇからな。さっきも言ったが、俺は本来はこの場所は管轄外だ。…だが、そう言った警察のやつの気持ちも分かる。」
「なら、あんたも同じじゃない。」
「…ふん。お前らに警察の末端で働く俺たちの気持ちが分かるわきゃねぇわな。…とりあえず今は話は終いにしろ。」
邑上はそう言うと、ハンカチで鼻と口を塞いでまた勝手口から中に入っていった。
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