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ガラリと重いガラス戸を開けると、ライオンが入り口に寝ていて、オウムが、
「倫太郎、ドM、ドM」
と叫びながら店内を舞っている。
……あいかわらずの無法地帯だ。
冨樫の中の常識センサーが退避勧告を出していたが、そのとき、子狸たちと遊んでいたらしい壱花がレジの前で振り向いた。
「あ、冨樫さん、いらっしゃい~っ」
その肩には前回手に入れたケセランパサランがのっている。
いや、のっているというか、壱花の肩付近でふわふわしているというか。
真っ白なうさぎのしっぽのようなそれは、一時期、イケメン化け狐、高尾のせいで、店内にあふれ返っていたのだが、いつの間にか、数が少なくなっていた。
何処に消えたんだろうな……。
客についてってるとか?
家のタンスとか開けたら、いきなりいそうで怖い、と思ったとき、ガラガラと戸が開き、生活に疲れたサラリーマンが入ってきた。
ライオンを見て、うわっ、と叫ぶが、結局、そのまま入ってくる。
常連の人間たちは、この無法地帯に慣れてきたようだった。
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