998人が本棚に入れています
本棚に追加
/72ページ
「……やっぱり、甘酒わかしましょうか」
と濡れてやってきた彼らを見ながら、ちょっと笑って、壱花は言った。
雨だれの落ちる軒下を見て呟く。
「そういえは、冨樫さん、疲れ果ててるはずなのに来ませんね~」
「此処に来たら、お前が騒動起こして、余計疲れそうだからじゃないか?
こんな日は、寄り道せずに帰って、ぐっすり寝るのが一番だよ」
と倫太郎自ら、この店の存在を全否定するようなことを言う。
「気分転換も大事だと思いますけど。
冨樫さん、真面目ですからね~」
と言いながら、壱花は蝋燭の怪談が一区切りついたところで、せーのっ、と奥の座敷の戸を開け、駆け込んだ。
最初のコメントを投稿しよう!