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ま、ライオン食いつかないしな、と思いながら、
「なにをしている?」
と壱花に訊いた。
「アイス作ってるんです」
と下を向いて、なにかを蹴っていた壱花が笑って言ってくる。
……アイス?
見ると、この間買ってきたステンレスのボウルと、誰かが何処かから持ってきたらしい、少し変形したもうひとつのステンレスのボウルがガムテープで止められ、ボールのようになっている。
「蹴ったらアイスになるとかいうあれか」
「そうなんですよ。
中にビニール袋に入ったアイスの材料と、氷と塩が入ってるんです」
氷にはとけるときに周りの熱を奪う性質があるのだが。
氷に塩をかけると、とけるスピードが上がり、周囲のものの温度を急激に下げる。
その性質を利用してアイスを凍らせるようだ。
また、蹴ることにより、アイスの材料が攪拌され、空気を含んで美味しくなるらしい。
「……昔は、手で混ぜてたもんだがな」
「えっ? 冨樫さん、自分でアイス作ったりしてたんですか?」
と壱花が驚いたように振り向く。
「ちょっと手伝ったことがあるだけだ。
ああ、パフェが嫌いになる前な」
そう、ぼそりと言った。
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