優しくしないで

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それからの日々は忙しく、バタバタとした時間を過ごし、日葵は隣に住む壮一の顔をほとんどみることがなかった。 会社では厳しくもみんなを引っ張て行く壮一のおかげで、ずいぶん業務も円滑に進むようになっていた。 「長谷川さん、ここって」 可愛らしい一つ後輩の榊原柚希の声に、日葵は振り返る。 「ああ、この数字の計上はここのファイルから……」 パソコンの画面を操作しつつ、日葵は柚希を見た。 「ああ!ありがとうございます」 素直で仕事の飲み込みも早い柚希は、あっという間に部署にも馴染み、日葵も本来の自分の仕事に集中できるようになっていた。 「柚希!ちょっと!」 気になることと言えば、壮一が呼ぶこの言葉。 もともと総務部にいた柚希を、壮一が連れてきて以来、壮一は柚希の事をたまに呼び捨てにする。 もちろん、普段はきちんと部下との距離を取っている壮一が、ふとしたときに呼ぶその名前。
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