変化する関係

6/44

2698人が本棚に入れています
本棚に追加
/234ページ
『昔に戻ろう』その言葉のままなら、この距離なんて普通のはずだ。 小さい頃は一緒に眠ったことだって何度とあるし、いつもこの距離で会話をしていた。 しかし……。 やっぱり今は違う! 日葵の中で感じた感情はそれ以外の何物でもなかった。 離れてた時間のせいか、再会してからの上司としての壮一をみたせいか、理由など考える余裕はなかったが、日葵の心臓は煩いぐらいにドキドキと音を立てる。 高校に入ってまったく話さなくなった冷たい壮一とも、小さい頃の優しい壮一でもない。 今ここにいるのは今の等身大の壮一だ。 そのことが日葵を混乱させる。 知らない人のように感じる壮一に、ザワザワとするこの感情が何か考えたくなかった。 「あっ、えっと」 そんな気持ちを悟られないように、日葵が話を続けようとしたのに壮一は目を逸らすことなく、日葵の瞳を覗き込んだ。 そのままどれほど見つめ合っていたのだろう。きっとほんの数秒だがとてつも長く感じる。 「日葵……」 呟くような声とともに、更に壮一の顔が近くなる。
/234ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2698人が本棚に入れています
本棚に追加