2720人が本棚に入れています
本棚に追加
/234ページ
「大丈夫です。わかりました」
きっと迎えにくるというだろう。そんな壮一に日葵は静かに言葉を発して、電話を切ろうとした。今壮一に会えば、ぐちゃぐちゃな気持ちがさらに加速しそうだった。
『ひま、いい加減にしろ』
かなり怒った様子の壮一に、なぜか日葵は涙がポタリと頬を伝う。
仕事も忙しく、崎本の事も、壮一のことも、何もかもがわからない。
「だって、だって……」
『もういい、こっちで確認する』
え?
日葵のスマホの位置情報など、きっと壮一にかかればすぐにわかるだろう。
『なんでそんなところに、カフェも何もないな……くそ』
呟くように聞こえた後、電話の向こうでガサガサという音だけが聞こえる。
『絶対に動くな!』
その言葉を最後に、日葵の耳に無機質な音が聞こえた。
最初のコメントを投稿しよう!