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ぼんやりしながらもうどうしようもないと、日葵はその場に立ち尽くしていた。
ようやく寒い、そんな感覚が襲いコートの胸元をキュッと手で閉じる。
それから数分後、車ならそれほどの距離でないことが、壮一の車が目の前に止まったことでわかった。
バンという大きな音を立てて、壮一が走って来るのが見えた。
「日葵!」
慌てたように壮一が目の前に現れ、なぜかほっとしてしまった自分に驚いた。
会いたくない、そう思っていたのに。
「お前なにやってるんだ! こんな寒いのに行くぞ」
壮一も慌てていたのだろう、昔のように日葵の手を掴み車へと引っ張っていく。
「お前、なんだよ、この氷みたいに冷たい手は。どれだけ外にいたんだよ」
もう心配を通り越して、怒っている壮一に「ごめんなさい」それだけを日葵は呟いた。
「謝れなんて言ってない。何をしてたんだって聞いてるんだよ!」
冷静沈着な壮一ではない慌てた壮一を見て、日葵はなぜか少しだけ嬉しくなる。
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