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強引に助手席に乗せられるも、車の中の温かさにホッと息を吐くと、運転席に乗り込んだ壮一の視線に気づいた。
「何かあったのか?」
静かに問われ、日葵はギュッと唇を噛んだ。何を答えればいいのだろう? 何も話す気がないと分かったのか、壮一はため息交じりに車を発車させた。
マンションの駐車時用に着くと、日葵はこれ以上壮一に何か聞かれるのを避けるようにドアノブに手をかけた。
「すみませんでした。お手数をかけて」
昔に戻れないと言われた以上、このセリフが正解だと日葵は思いそう言葉を発した。
「じゃあ、上司として聞く。何があってあんなところで一人さまよっていたんだ?」
上司として聞かれようが、まさかあなたのことですとは言えず、日葵は黙り込む。
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