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「なんでもありません。少しイルミネーションが見たかったんです」
言い訳のように呟いたその言葉に、助手席から大きなため息が聞こえた。
「そうか……。なんていうと思ったのか?」
(怒った?)
そう思った日葵だったが、壮一の表情は苦し気で、本当に心配してくれていると理解する。
「ごめんなさい」
そのセリフしか浮かばず、同時にまた瞳から涙が零れ落ちる。
泣きたくて泣いているわけでもなく、ただ瞳から水が落ちてくるそんな感覚だった。
そのため、どうしたらその涙を止めるのか全く分からなかった。
「日葵……」
呟くように聞こえ、壮一の手が日葵の頬に触れその涙を拭う。
小さいころから当たり前の行為だが、その手はすぐに離れて行ってしまう。
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