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「悪い」
そしてすぐに聞こえたその謝罪に、日葵はもう訳が分からなかった。
崎本への気持ちも、急に小さいころからの関係もすべて変えようとする壮一も。
「どうして? なんで昔みたいにはできないの?」
絞り出すように問いかけた日葵に、今度は壮一がビクッと肩を揺らす。
「もう昔とは違う」
静かに言われた言葉に、日葵はもう感情がグチャグチャで自分でも支離滅裂なことを言うのを止められなかった。
「どうして? ようやく仲直りできたのに、どうして昔みたいに仲良くできないの? ねえ? どうして」
泣きながら壮一に詰め寄る日葵の目に、苦し気に歪む壮一の瞳が目に入ったと思ったと同時に、いきなり壮一に引き寄せられる。
苦しくなるぐらい力強く抱きしめられ、日葵は息が止まるかと思った。
壮一の肩に顔を埋める形になり、その表情は解らない。
ただ、驚きと壮一の力強さに、呆然とただ抱きしめられるままになっていた。
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