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「そうちゃん……?」
ただ心臓の音がバクバクと煩くて、ただその呼び名が口から零れ落ちる。
「言っただろ? 俺はお前といると触れたくなるって」
耳元ではっきりと言われた言葉に、日葵の思考はピタリと停止する。
そしてグイッと身体を離され、そこにある壮一の熱の孕んだ瞳にハッとする。
兄でもない、ただ一人の男の人だと認識するも、どうしていいかわからず見つめられる瞳から逸らすこともできなくて、ただ壮一を日葵も仰ぎ見た。
「幼馴染でも、妹でもなく、ただ一人の女として好きだ」
真っすぐに言われ、日葵の思考は完全に停止する。
「だから、一緒にいればお前触れないことはもうできない。無邪気に触れていたころとはもう違うんだよ。だから、もう日葵とはいられない。お前は崎本部長が好きなんだろ? お前を困らせるつもりはなかったんだよ。さんざん今まで苦しめたんだからな」
最後は寂し気に伝えられた壮一の言葉が、ただ無機質な空間に響いた。
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