変化する関係

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「そうちゃん! ねえ大丈夫しっかりして」 日葵が駆け寄り声をかけるも、全く動かない壮一に日葵は自分の血の気が引くのがわかった。 すぐにたくさんの人が壮一を運ぶために集まってくる。 「あなた、私がついてくわ」 「俺は離れられない。頼む。弘樹にも連絡を……」 両親の言葉に、日葵は叫んでいた。 「私が行くから! 私がついていくから」 「日葵……」 壮一の手を握り締めながら、伝える日葵に母である莉乃も静かに頷いた。 「容体がわかったら連絡しなさい」 その言葉を自分でも聞いていたのかわからなかった。ただ壮一が心配でそれだけだった。 運ばれる壮一に付き添いながら日葵は会場を後にした。 「崎本君……。悪かったね」 残された場で言われた誠の言葉に、崎本は小さく首を振った。 「さっき振られたところだったので」 さっきの会話から日葵が誠の娘だと悟ったのだろう。それでも何も言わず崎本は誠たちに礼をする。 「俺も飲んできます。清水君には長谷川が付いているから大丈夫でしょう」 「ああ、ありがとう」 すでに社長の顔に戻っていた誠に、崎本は「失礼します」それだけを言うとその場を後にした。
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