変化する関係

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(もう抜けよう) そう決めて、壇上から降りて誠に挨拶をしようとしたところで、あろうことか日葵の元へと歩いて行くのが解る。 娘が大好きな誠だから、考えれば今回の件を労う目的と称して日葵のところへ行くのは何も不自然じゃない。 そんなこと少し考えればわかりそうなものなのに。壮一は今更その事に気づいた自分に苛立ちを感じつつ、いますぐにここから立ち去ろう。そう思ったところで、視界に日葵を捕らえた。 柔らかな笑みで日葵の髪に触れる崎本が見え、一気に血の気が引く気がした。 (こうしてずっとこれから俺は日葵の隣にいる崎本を見続けなければいけないのか) 目の当たりにした現実に、誠と日葵が話している内容も頭に入らない。 (日葵の幸せを願うんだ。これ以上俺のせいで苦しめることはできない……) そう思ったところで、壮一の意識は完全に途切れた。真っ黒な闇へと引きずられるように重い身体は自らの意思を失った。
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